2月、福島へ ― その4 飯館村~南相馬~原発20km圏内  [Fukushima at February 4,2012]


3日目。テレビ局の人とは別れて、20km圏内へ入る。
20km圏内に入るには「正当な理由」が必要で、報道はただそれだけでは入れないらしい。
私はHOPE-Japanの活動で5月から続けている20km圏内の土壌の採取計測のために、一緒に入った。
報道も入れるようにして、どんどん伝えたらいいのにと思ったけれど、そう単純ではないらしい。
土足で人の家に踏み込むような人たちもいるから、と。
圏内で写真を撮ることは何人か会った警備の人にも止められなかった。真実を伝えて欲しいとのこと。

福島市から飯館村を通って南相馬へ向かう。

今回の取材される側主役の藤田さん。科学者さん。今回私よりたくさん写真を撮ってると思う。

途中たくさんの柿が収穫されないまま熟れて落ちていた。

あんぽ柿は福島の名産。実家でも柿の木が2本あって、おばあちゃんが元気だった頃は収穫して干し柿作ってた。
そんな自家製のあんぽ柿だけじゃなく、販売用のあんぽ柿をつくっている農家さんもいる。
そのあんぽ柿が今年は全滅だそう。
生柿なら大丈夫なのに、あんぽ柿にするとセシウムが4倍から5倍に濃縮されるから。
基準値にひっかかる。

今年は「違う」風景。

飯館村。
確かに手元の線量計の数値があがった。

でも私が考えてることは「綺麗な場所だ」ということばかり。
容堂さんに「綺麗な場所を綺麗だって撮っても、福島だってわかった途端に悲しく見えるらしいよ」と言われる。

南相馬。

小澤さんという農家の方にお会いする。南相馬の「今」。

放射線量を測定してもらって2.0μSv/hを超えないと南相馬市の子ども・妊婦の特定避難勧奨地点に指定されない。なのにその測り方が杜撰すぎるという憤り。

定められた手順にすら沿わずに測って、紙を一枚出す。それで南相馬の人間の運命は変わってしまう。そんなことがあっていいのか、と戦っているとの話。

南相馬市役所前。0.29μSv/hの表示。
自分でガイガーカウンターを持って思ったのは。
体温計で熱がある時にどこまで高いのが出るか見たくなるみたいに、線量を高いところを測りたくなる、という気持ちがあった。
そこに住む人がいることを考えたら、すごく良くないことなんだけど、恥ずかしいことだけど、高いところばかりを測って「こんなにあるよ」ってする人の気持ちがちょっとわかった気がした。
で、その後に、どうでも良くなった。
線量が高いところと低いところがある。
福島市でも私が普通に通ったような場所は0.2μSv/hから高くても0.8μSv/hぐらいだった。
これを側溝近くや草むらに近づけると4.0μSv/hぐらいまであがったりする。
ここは高い、ここは低いとわかるようになって、だけど高いところにずっといるわけでもない。
それはそこにあるものとして、バランス、なのだと思う。
そう思ったのは私が「通り過ぎる人」でしかないからかもしれない。
「通り過ぎる人」だからこそ、同じように「通り過ぎる人」が福島に来て線量の高いところばかり測って「こんなに高い」とするのは、変だし滑稽だと思った。

南相馬のスーパーでお弁当を買った。

私は緊張していてあまり食べれなかったのだけど、専門家の藤田さんが「セシウムがもしヘリウムだったら被曝したらわかるから便利だよね。みんな声が高くなっちゃうの。」とか言って笑わせてくれたからおにぎりを一個だけ食べた。

20km圏内に入る許可証を南相馬市役所で受け取る。

津波地域を通って向かう。

そして20km圏内へ。