森について

森について考えている。
激しさと厳しさと穏やかさを持った場所。

ざざ降りの雨は樹の葉を打ち、地に落ち、滝のようになって這うように流れる。
晴れた朝には、陽はふかふかの地面を葉の隙間を縫って落ち模様を作る。

たくさんの生きものがその中で生きている。
森がくしゃみをするとみんな心配をするし、森がくすぐったいように笑うとみんな嬉しくなる。
そこには競争や諍いもあるけれど、水が低いところに流れるように、連鎖が決まっているように、然るべきところに落ち着いていく。

森は記憶に似ている。
もしくは森の中に居ると、もしくは森を見ていると、遠く砂埃の向こうにあったような忘れかけていたことを思い出す。
でもそれより記憶そのもの、に、似ている。
記憶は変容する。森も変容する。
季節によって、天気によって、時間によって、立つ場所によって、森は変わる。
そして今も成長し続けている。水に削られたり砂漠に侵食されたりしながらも、飲みこむように包み込むように成長し続けている。

今、私は、そんな森について考えている。