人魚のいない海

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「海にゐるのは、あれは人魚ではないのです。海にゐるのは、あれは、浪ばかり。

 曇つた北海の空の下、浪はところどころ歯をむいて、空を呪つてゐるのです。いつはてるとも知れない呪。」

中原中也のこの詩を読んだ時に、私は何故か、いないと言っているその人魚が思い浮かんだ。これは、人魚のいない海。曇天の下、汚れた人魚の住めぬ海。ロマンチックの欠片もない。でも、嫌いじゃない。

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ぐらり。